ルームシェア②いきさつ

 そもそも三人で暮らす事になった発端は私の一声
からだ。東京に行った際に上の住んでいた吉祥寺の
アパートに泊めてもらった。


 ○○荘という時代錯誤の名前が付いたそのアパートは
井の頭公園のすぐそばにあった。上と公園を歩いていると
入り口の脇に小さな野外ステージがあり、
 「ここが『ろくでなしブルース』で前田と葛西が殴りあった場所
とよ」と自慢げに上が言った。さすが、東京人。会話の流れを折る
こともなく、サラッと場所に関する薀蓄を語る様は、私にシティ
ボーイの憧れを抱かせた。



 その○○荘。築30年だが、40年だがの木造アパートで、冬は寒く、
夏は暑くて虫が湧くという話。上は利便性の良さと、家賃の安さから
このアパートに住んでいるというのだ。壁が薄いため、少しでも会話
が盛り上がって声が普通の大きさになると、上の階の住人がドンドン
と壁を叩いて、静かにしろ!というメッセージを送ってくる。そうなる
としゅんとして小声でしゃべりあっていたものだった。


 そして地元の友達の松。彼は成増という場所で去年から一人暮らし
をしていた。
 「東京生活は楽しいかい? 」と尋ねると、
 「まだ引越ししてから半年も経ってないけど、新築のマンションでこの
値段だからいい。でも、遊びに行くのは会社の同僚がメインでそういう
意味では、東京生活が楽しいとは言えない」
とテレビに写っている川越シェフを見ながら呟いた。
 

 こんな二人の家を行き来しながら、私は自分の家を探していた。第一
候補は、どこぞの会社がやっている「ルームシェア」。外人もいて、基本
的な家財道具は揃っている。保証人もいらない。ネットで見る限り、飲
み会などの写真があり、女性もいて楽しそうだ。むしろ、女性が居て
楽しそうだ。一緒に住んだら、楽しいだろうな。とか思って一度見学に
行った。


 吉祥寺から指定されたバスに乗り、コトコトと指定された駅まで行き、
そこから迎えにきてもらって、話を聞きながらルームシェアの家に着いた。
5畳くらいの部屋で机はある。食器など使っていい。ただ至るところに
『共同生活のルール』みたいなのが貼ってあった。


 家賃は思ったよりも安くない。そして新宿まで2回乗り換えで、1時間。
駅からは歩いて15分。なおかつルールが多すぎて嫌になった。一番
嫌だったルールは同居人以外の人を呼べない。まるでメキシコで住ん
でいた寮だ。


 まぁ会社が介入して、微妙な安さを売りにして利益を出そうと思った
ら、都心から離れた一軒家を改築して、8人だがの大所帯にして、不当な
輩を排除するためにルールの徹底化を行い、そして系列ルームシェアの
飲み会で住人同士を親睦させ、男女の出会いを提供してなだめるしか
ないな。と思った。というか、一回の見学で簡単にばれすぎやろ!



 別に利益を上げる必要はないので、もっと緩やかで、毎週パーティが
開かれるようなそんな理想のルームシェアを作ったほうが断然良いでは
ないか!と思うのは至極当然であって、その同居人は必然的に友達
の上と松になる。



 片づけが苦手な上には、こう言った。
 「一緒に住めば家賃も安くなるし、何よりも女の子を入れれば、その人
が片付けはやってくれるって。今まで通り自由恋愛とフリーセックスを
貫いてもらって全然いいから! 」


 会社以外の知り合いがあまりいない松にはこう言った。
 「俺の友達の上はすごい知り合いが多いよ。俺の理想は毎週のよう
に家で飲み会を開いて知り合いのネットワークを広げること。東京に
初めて住む俺じゃ、そいつは不可能だけれども、上がいる。いや、神
がいる。それは可能だよ。一緒に住むと絶対楽しいよ 」

 
 そしてもう一人、知り合いの女性の方も口説いていた。結果的には
この女性は一緒に住むことにならなかったが、住んだら住んでたで
問題なかったろうと思っている。



 こうして僕以外の二人の仲を徐々に埋めていき、さぁ家探しだ!と
いうところまでいった。そんな時期に、東北地方太平洋沖大地震が
起きた。






ふぃn




 

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